「なぜメダルを取れなかったのか」という言葉に傷つき
こんなふうにお話しすると、子育てでも競技でも、あまり挫折を経験してこなかったように思われるかもしれません。でも、決してそうではないんですよ。競技で生計を立てている私にとって、生活の中心は合宿や選考会、練習、国内試合。
年に数回は海外遠征に出ていますし、子どもの運動会や参観日などは欠席しなければならないことも多々。海外の遠征先で、娘が熱を出したとか怪我をしたといった連絡を受けるたびに、今すぐ飛んで帰りたい、そばにいてあげたい……と悶々としたこともたびたびありました。
北京オリンピックの時はファイナルに残れたので、私としては一つの通過点として最高の成績のつもりでした。しかし帰国すると、「なぜ最後の1発を外したのか」とか、「なぜメダルを取れなかったのか」といった言葉が多く寄せられて。
それがトラウマとなり、心的ストレスを受けたようになったのか、1年間は集中できなくて、成績もボロボロ。特に最後の1発と同じ方向の標的には、全然当たらなくなってしまいました。
いわゆるスランプの状態でしたが、競技をやめようとは思いませんでした。娘にも、自分が諦めない姿を見せたいと思いましたし、射撃で受けた悔しさは射撃で返すしかない、と。そして北京から2年後、アジア大会で優勝。そこから自分らしさを取り戻せた気がします。
自分を追い込む習慣はついていた
射撃は対人スポーツではないので、常に自分との闘い。メンタルな要素がきわめて強いスポーツです。どちらの方向へ飛んでいくかわからないクレーを瞬時に見極めたり、風の流れ方で変化する標的の方向を予測したり、とにかくものすごい集中力を要します。
競技の経験ももちろん大事ですが、経験がすべてではない。逆に経験があだになることもあります。やはり一番大事なのは、集中力を高めること、乱れずブレない心を持つこと。そしてそれをどんな場所や条件でも引き出せることです。普段の生活の中でも心掛けています。