再び美子ちゃんと
「イエスの方舟」に再び行くようになったのは、美子ちゃんと付き合うようになってからです。美子ちゃんに『隠されていた聖書』を送ったら、「イエスの方舟」に興味を持ったと言うので(美子ちゃんは毎朝礼拝があるプロテスタントの女子校に通っていました)、一緒に「シオンの娘」に行ってみることにしたのです。
4年ぶりに行く「シオンの娘」でしたが、4年の空白がまるでなかったかのように、「イエスの方舟」の皆さんがニコニコしながら迎えてくれました。「ボトルがありましたよね」と言って、4年前に入れたウイスキーのボトルが出てきました。店内の雰囲気も、そこにいる人達も何も変わってなくて、まるで時間が止まっているかのようでした。千石さんは意識的に店には来ないのですが、その時はたまたまいらっしゃったので、美子ちゃんを紹介しました。
この時から、2人で福岡の公共施設で行われる集会や、古賀に出来た「イエスの方舟教会」での集会にも参加するようになりました。
美子ちゃんと暮らすようになった最初の頃は、喧嘩が絶えませんでした。ぼくがあまり喋らないから何を考えているかわからないし、ギャンブルやら不倫やらの前科があるし、平気で嘘をつくし、3億円以上の借金があったし、美子ちゃんは不安だったと思います。
ぼくが「もうダメだ、別れるしかない」と思ったのは、2000年の「イエスの方舟」クリスマス集会の前日でした。九州まで行くのだから、前日に長崎へ行ってみようということになったのですが、これが最悪の旅行でした。べっ甲資料館を出て、冷たい風が吹くなか、両側が土産物屋だらけの、風情も何もない道を大浦天主堂に向かって歩いていた時でした。美子ちゃんが突然「もう観光は嫌だ!」と怒り出したのです。観光はぼくも嫌だったのですが、美子ちゃんが長崎に行きたいと言ったから付き合っているのです。「何で?」「目的のない観光は嫌だ!」「何で?」「バカみたいじゃない!」「長崎に行こうと言い出したのは美子ちゃんじゃない?」「そうだよ。自分は何もしないんじゃない。みんな私が手配して、自分は金魚のウンコみたいに人の後をくっ付いて来てるだけじゃない!」
「金魚のウンコ」と言われてぶち切れました。旅行だけでなく、何でも美子ちゃんの後をくっ付いて行く金魚のウンコ的人間だと言われたようで、「これはもう別れるしかない」と思いました。「そんなことで?」と思われるかもしれませんが、積もり積もったことがあり、金魚のウンコで頭がフリーズしてしまったのです。