2001年10月22日の集会後の千石さん(神藏美子写真集『たまきはる』より)

恨んでいた心がスーッと消えて

お互い口をきかない悲惨な一夜を過ごし、翌日クリスマス集会がある古賀の教会に行きました。クリスマス集会は全国から人が集まる大事な集会です。美子ちゃんは千石さんに相談したいことがあるようで、その内容を紙に書いていました。

いつもの集会では歌わない賛美歌をみんなで合唱し、クリスマス集会が始まりました。壇上の千石さんが最初に、「このなかに悩みを持たれている方がいます。その悩みをそのままにしておくと、集会そのものが成り立たなくなります」と言って、名前を伏せて美子ちゃんが書いた相談を読みました。ぼくは一個人からの相談は、集会が終わった後するものだと思っていましたが、それだと集会が成り立たなくなると千石さんは言うのです。そのことは、千石さんが美子ちゃんの悩みを、わがこととして受け止めていることです。それをまず解決しなくてはならないのです。そのことがわかって、美子ちゃんを恨んでいた心がスーッと消えて、涙がポロポロ出てきました。それは聖書的に言うと、悪魔が去ったということかもしれません。

その後も美子ちゃんは、度々千石さんに手紙を書いて悩みを相談していました。ぼくらは「イエスの方舟」にずいぶん助けられてきたと思います。

千石さんは、聖書は幸せになるためのハウツー書だと言っていました。「イエスを生活する」ことは出来なくても、聖書を読んでイエスの真似ぐらいは出来るのです。出来る範囲でやればいいと思うようになりました。そして、ほんの少し真似をしただけでも、自分の内面が変わることに気が付きました。

この頃は、年を取って性欲もなくなり、お互い裸でいても気にならなくなりました。そんな時、原罪前のアダムとエバみたいだなと思ったりするのですが、それは見かけだけのことです。本当に二人が一体になれば、わが家がエデンになるのです。死ぬ前にそうなれることが一番の念願です。

※千石剛賢さんは2001年の暮れに亡くなりました。最後に会員達に残した言葉は、「仲良くすること」「健康に気をつけること」「聖書の研究を続けること」だったそうです(「朝日新聞Travel」より)。
※「シオンの娘」は建物の老朽化により、2019年12月で閉店となりました。

※次回配信は8月26日(木)の予定です

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