「雪組トップに就任した17年のお披露目公演。表現者として生きていこうと決めたのは、あの時だったかもしれません。」(撮影=篠山紀信)
現在発売中の『婦人公論』8月10日号の表紙は女優の望海風斗さんです。2021年4月に宝塚歌劇団を卒業し、この夏のソロコンサートから新たな一歩を踏み出す望海さん。発売中の『婦人公論』から記事を掲載します。(撮影=篠山紀信 構成=丸山あかね)

宝塚大劇場でお披露目公演に臨んだ時

2021年4月に宝塚歌劇団を卒業しました。小学生の頃、初めて宝塚の舞台を観て、一気に魅了されてタカラジェンヌになりたいと夢見るようになったんです。当時の自分に「その調子で頑張れ!あなたが思う以上の素敵な未来が待っているから」と教えてあげたい。本当に幸せな18年間だったと、心から感謝しています。

さまざまな瞬間がありましたが、なかでも雪組トップに就任した17年、宝塚大劇場でお披露目公演に臨んだ時のことが忘れられません。重責を担い、プレッシャーと闘いながらお稽古に取り組む日々は、正直、すごく苦しかった。

でもそれだけに初日のステージを無事に終え、万雷の拍手をいただいた時には、「頑張ってきてよかった!」と感慨もひとしおで。「私は舞台が好きだ!」と確信し、「もっともっとお客様に喜んでいただけるように頑張ろう!」と思いを新たにすることもできました。表現者として生きていこうと決めたのは、あの時だったかもしれません。

この夏には、退団後初となるソロコンサート「SPERO」がはじまります。ジャズに挑戦するほか、宝塚時代の楽曲も歌いますし、ダンスも盛り込む予定です。8月にはラミン・カリムルーさん、10月初旬には井上芳雄さん、海宝直人さんをスペシャルゲストにお迎えしてデュエットを披露するという、このうえなく光栄な企画も。

実は宝塚在団中に、テレビの歌番組で山崎育三郎さんと一緒にミュージカル『エリザベート』の「闇が広がる」を歌ったことがあるのですが、あの時は男役としての男性との共演でした。とても悔しかったんです。どんなに頑張って低音で歌っても、本物の男性にはかなわないのだなって。