「被災地は、10年たっても完全には復興しておらず、闘いは続いている。みなさんにエールを送る気持ちで、収録に取り組んでいます。」(撮影=篠山紀信)
現在発売中の『婦人公論』8月24日号の表紙は女優の竹下景子さんです。NHKの朝ドラ『おかえりモネ』にヒロインの祖母役として出演し、ナレーションも務めている竹下さん。舞台となった気仙沼には特別な思い出があるそうで――。発売中の『婦人公論』から記事を掲載します。(撮影=篠山紀信 構成=篠藤ゆり)

エールを送る気持ちで取り組んでいます

小さい頃から声に出して本を読むことが好きでした。ですから今も、朗読やナレーションのお仕事をいただくととても嬉しいんです。

現在、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』に、ヒロインの祖母・雅代役で出演しながら、ナレーションも務めていますが、「毎朝、聞いています」と声をかけていただくと、ますますやりがいを感じますね。

雅代さんは宮城県気仙沼の大島をモデルにした「亀島」で生まれ育ったという人物。偶然ですが、14年前に旅番組で大島を訪れたことがあり、当時80歳だった寿(す)ん子さんという方と出会いました。彼女は島の女性のまとめ役で、私たちに郷土料理をふるまってくださった。広間で一緒に歌って踊って……、それはそれは、思い出深い旅だったんです。

東日本大震災の後、手紙を出したものの連絡が取れなくて。とても心配していたのですが、その後、報道番組で気仙沼を訪問することになり、なんと出発の前日に寿ん子さんから手紙の返事が! 島で再会し、大泣きして抱き合いました。そんな思い出もあり、祖母役のお話をいただいた時、「あぁ、これは寿ん子さんだ」と。

被災地は、10年たっても完全には復興しておらず、闘いは続いている。みなさんにエールを送る気持ちで、収録に取り組んでいます。