被災した馬たちとの再会

その2週間後、筆者たちは富良野を訪ねた。崩落した橋は富良野市が直し、塾地内は夫妻と東さんの手で少しずつ整備されはじめていた。

ただ、流された物置は、川に浸食された土に土台がめり込んだままだ。土砂で埋まった牧草地の枯れ木を取り除いた跡には、すでに草が生えてきた。自然の回復力のすごさを垣間見る。

十勝の田中さんの状況がひどいからと、夫妻は何度か十勝へ通い、牧場の復興を手伝ってきた。それに同行することになり、十勝へ向かった。

日高山脈の麓に広がる「十勝千年の森」。千年後の人々へ美しい森を遺そう。そんな思いを込めた、400ha(東京ドーム85個分)もの森の一画で、田中さんは、ネイチャーホースライディング(馬に寄り添い、コミュニケーションを取ることから始める森の乗馬体験)を主宰している。

その牧場で、大塚家の馬5頭がお世話になっている。到着し、馬たちに会うため、森の中を歩く。

「ここは小川だったんですが、今回の洪水で流れが変わって、こんなに広くなってしまいました」

速い水流を指さしながら、田中さんが教えてくれた。まず、馬たちが暮らす牧草地へ。私たちが近づくのに気付いて、4頭(1頭は別の場所に)はそろってずっとこちらを見つめている。シェフと敬子さんは1頭ずつ額や体をなでながら話しかける。「あかりちゃん、なかなか一緒に暮らせなくてごめんね」「勇気、仲間をよろしく」……。

ずっと夫妻にくっついていた馬たちはわかったのか、安心したのか、下を向き、牧草を食むために移動を始めた。馬たちと別れ、森の小道の陥没を直す作業を手伝って、十勝を後にした。