「嵐で馬たちを救出できない!」
そんななか、馬5頭を預けている十勝の牧場の田中次郎さんが電話で、「嵐のなか、馬たちを救出できない。このまま雨風にさらされたら、サラブレッドは皮膚が薄いので低体温になり危ないかもしれない」と言ってきた。しかもその後、連絡が途絶えた。
「馬たちの力を信じるしかないです。十勝の原野で放牧されて冬を過ごせたのだから、この嵐も乗り切ってと祈ることしかできない」。敬子さんはとても心配していた。
「塾地がどうなっているか、まず確認したい。支えてくれる人たちや、倉本先生もいらっしゃる。早く富良野へ戻りたい。十勝の田中さんの状況も気になります」。ふたりは口をそろえた。
翌日、十勝地方の甚大な被害の様子が明らかになり、田中さんの様子も伝わってきた。家が浸水し、避難所生活を余儀なくされていた。馬たちは幸い、全頭無事だった。夫妻は東京を完全に引き揚げ、富良野へ戻っていった。