佐藤 私の場合、納得のいく原稿がなかなか書けないのは、やはり心身の衰えでしょうね。
五木 でも佐藤さん、すごくシャキッとしていらっしゃる。さっきご著書の帯に入れる写真のために撮影されているところを拝見したら、若いモデルさんみたいにすっと立たれて、きりっとカメラ目線で。(笑)
100歳を軽やかに超えていただきたい
佐藤 うちの娘は、私のことをマグロだって言うんですよ。マグロは死ぬまで泳ぎ続けて、泳げなくなった瞬間にパタッと死んじゃう。私がうまく書けないとぼやいても、「それでも書いていないといられないのは、マグロだからしょうがないよ」って言うの。頭に来ますよ。(笑)
五木 あはは。でも佐藤さん、ご自分で「私はマグロ」なんて言わないでくださいね。マグロとはセクシャルな意味で、不感症の女性のことを言うんですから。
佐藤 あら、そうなんですか? それは知らなかったわ。
五木 やっぱり佐藤さんは、お嬢さんなんだな。こうやってお話ししていても品がいいし、下賤な言葉はご存じない(笑)。僕にとっては、生涯で出会ったチャーミングな女性ベストスリーの筆頭ですから。頑張って、せっかくだから100歳を軽やかに超えていただきたい。
佐藤 いやぁ、もう成り行きまかせが一番楽。
五木 まぁ、そうだね。「人生100年時代」に、佐藤さんみたいな先輩を見ていると、元気が出ます。こんなふうに生きていければ、人生悪くないな、と。
佐藤 95歳くらいになられた時の五木さんにお会いしたいですね。
五木 その前に佐藤さんが100歳になられたら、もう1回『婦人公論』で対談しませんか? 佐藤さんはきっと、100歳になってもカメラ目線でしゃきっと立っておられる。終着駅は始発駅ですからね。