病院とは縁遠かったという、五木寛之さん(左)と佐藤愛子さん(右)。その理由は――(撮影:大河内禎)
97歳の佐藤愛子さんと、88歳の五木寛之さん。長らく病院に行かなかったというのが不思議な共通点。対談前篇では、思い出のなかの知人たちや時代について語り合いました。話題は健康や、自身についての新たな発見に広がっていきます(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎)

目が乾く、涙が出る…

五木 佐藤さん、最近体調のほうはいかがですか? どこかご不自由なところはおありですか。

佐藤 耳が遠くなりましてね。補聴器をつけているんですが、これが高いんですよ。片方なくしたことがあって、ほんと、死に物狂いで探しました(笑)。それから目ね。五木さんは、目はなんともないですか?

五木 もちろん立派な老眼。(笑)

佐藤 私は目が乾くものだから、自然に涙が出てくるのね。それで目のまわりがジクジクするんです。

五木 それは僕も同じだな。困るのは、講演の最中に自然に涙が出ること。それがたまたま母親の話だったりすると、聴衆がもらい泣きしたりして。(笑)

佐藤 健康のことには、お詳しくていらっしゃいますよね。

五木 養生は道楽だから。趣味であれこれやっているだけです。

佐藤 野口整体ってご存じですか。

五木 はい、野口晴哉(はるちか)さんですね。

佐藤 深くお入りになりました?

五木 僕は養生に関する本を読むのが好きでしてね、野口さんの奥様がお書きになった本は本当に面白い。

佐藤 私は野口整体のおかげでこの歳まで生きてこられたと思うくらい。38歳頃から欠かさず通っているんです。野口先生の治療も2、3回。その後は一番弟子の方に診ていただいていたのですが、亡くなられてしまって。それで初めてお医者さんにかかるようになったんです。