文芸評論家で、書籍にまつわる著書を多く手掛けている斎藤美奈子さん。その斎藤さんが、翻訳少女小説から『赤毛のアン』や『あしながおじさん』などの9作品をセレクト。あらためて掘り下げた一冊を刊行しました。いずれも100年以上も残るロングセラーですが、大人になった今読み直すと、子どものときに気づかなかった発見をたくさんできたそうで――。(構成=山田真理 撮影=帆刈一哉)
あの名作の魅力を再発見
『若草物語』や『長くつ下のピッピ』のような、少女たちが活躍する物語を愛読した経験が皆さんにもあると思います。私自身、小学生の頃は『あしながおじさん』が大好きで、続編の影響もあるのですが、将来の夢は孤児院の院長でした(笑)。
19世紀後半から20世紀前半、多くは女性作家によって綴られ、世界中の女子たちを夢中にした少女小説。そこからお馴染みの名作9編を選び、何が書かれていたかを掘り下げたのが本書『挑発する少女小説』です。
家庭小説とも呼ばれたこのジャンルは、社会の工業化が進んでいた当時、「男は仕事/女は家庭」という性別役割に相応しい、よき家庭婦人を育てる目的も担っていました。けれども読者の少女たちが面白いと思い、「これは私の物語だ」と思わなければ、100年以上もロングセラーとして生き残ることはなかったはず。
その理由を探るべく作品を読み直すと、子どもの頃には気づかなかった多くの発見がありました。