中尾 今の若者はわからないが、自分たちの頃は男にとって欲しかったものを「買える」「集められる」のは、一人前に稼げる男になった証拠なんだよ。自分の力で勝ち取った宝物というある種のロマンなわけで、そう簡単には手放せない。
池波 それを「何よこんなガラクタ」とか言われると、男の人は傷ついて頑なに捨てようとしなくなる。女だって昔に買った服を「もう若くもないんだから、さっさと捨てれば」なんて言われたら嫌じゃない。
中尾 男も心のどこかでは、「そろそろ何とかしないとな」と思っているんだよ。それを上手にくみとって、行動につなげるように刺激してあげればいい。
池波 奥さんが最初に、自分の部屋を片づけて「ああすっきりした」なんて、夕飯どきの話題にしたらどうかしら。次はリビングや収納など共有の部分で、「これを処分して、新しくしようかと思うのだけど」と相談する。処分したいものを目につく場所へ出して、じっくり考えてもらうのもいいと思う。とにかく男性に行動を起こしてもらうには、焦っちゃダメです。
中尾 あとは、「いいもの」を見て審美眼を磨くことかな。世の男性はけっこう身の回りに置くものに無頓着で、いいものを知らない。食器でも家具でも「いいもの」を知っていると、家にゴチャゴチャあるもらいもののコップとか、くたびれたソファが「もう要らないか」と判断できるようになると思うんだよ。
池波 そうやって整理できれば、きっと人生がより豊かになったと実感できるわね。
中尾 まずは最初の一歩を踏み出すことが肝心だろうな。俺たち夫婦は、片づけたおかげで生活の余分なものがそぎ落とされて、考え方も若返ってきた。ここから先の人生に、また一つ自信が持てたような気がするね。