土俵入りで横綱の調子を見る
照ノ富士の独走の優勝を既に予想している人が多いと思うが、相撲は何が起こるかわからない。幕内土俵入りの時、関脇・御嶽海がこれまでにない気迫の顔をしていた。前頭三枚目・若隆景、前頭四枚目・大栄翔、前頭八枚目・翔猿の初日の勝ち方は、優勝とまでは言えないが、今後に期待が持てる。
しかし、残念だ。横綱・白鵬が所属する宮城野部屋から新型コロナウイルスの感染者がでて全員休場。白鵬、前頭・石浦、十両・炎鵬、新十両・北青鵬の相撲が見られない。
私は毎場所、横綱の土俵入りをテレビの前で一緒にすることで横綱の調子を判断してきたが、今場所は白鵬と照ノ富士の両方の土俵入りをしなくてはならないと思った。それには体力がいるので、平成17年に国技館に相撲観戦に行った時に手に入れた『相撲健康体操』の冊子を、相撲の資料を入れている「相撲箱」から探しだして、稽古を始めた。
塵浄水(ちりちょうず)の型、四股の型、伸脚の型などがあり、老体にはかなりキツイ。その努力も白鵬の休場で無駄になった。
以前は尊敬されたのに、頂点を極めてからの行動で横綱審議委員会に注意され、相撲通のファンに人気のない白鵬。以前はやんちゃだったのに病気と怪我で大関から序二段まで落ちてから這い上がり、横綱としてひたむきに相撲道を究めようとしている照ノ富士。二人の横綱を比べながら15日間相撲を見たかった。
先日、平成3年の日記をみつけた。私は当時、父親の介護と両親の借金に巻き込まれて苦闘しながら、忙しい会社に勤めていて、相撲だけが心の支えだった。日記の中に、藤島親方(当時。元大関・貴ノ花。元横綱・三代目若乃花と貴乃花の父親)がテレビに出演して、「ただ相撲を取っているだけでは駄目。俺の生き方を見てくれという相撲が、見る人の感動を呼ぶ」と言ったと書いてあった。
今の照ノ富士はそれにかなっている理想的な力士だ。
最近、「サスティナブル」(持続可能な)と言う言葉が、地球環境、社会的なこと、企業の存続などに使われている。大相撲は、人々に生きる力や感動をあたえ、長く続いてほしい。力士の皆様、未来に続く「サスティナブル相撲」の実現をお願いします。