田中 よく役者が、「役を引きずってしまい、家に帰っても抜けない」って言いますけど、若い頃は憧れましたね。今までそんなこと一度もなかったけど。中谷さんはどうですか?
中谷 今は役に引きずられるということはないけれど、撮影中は睡眠時間の確保すら難しくなりますからね。ある時期から割り切って、仕事とプライベートを完全に分けて考えるようになりました。
働く女性にとって理想の夫とは
田中 今回、映画『総理の夫』で久しぶりの共演となり、畏れ多くも中谷さんの夫・日和を演じています。畏れ多くも総理大臣の夫役、と言ったほうがいいのかな。
中谷 日本初の女性総理大臣となる凛子ですが、彼女のような人に未来を託したいと本気で思いました。道なき道を切り拓いてくださった先輩方のおかげで、かつてに比べれば私たち女性にとって生きやすい世の中に変わってきているとは思います。
それでもまだ不平等や困難がたくさんある。私も仕事を選んだために諦めたことがたくさんあります。でも凛子は、自分の人生を犠牲にせずに女性が活躍できる道を作り、世界を変えようとするんです。
田中 芸能界は、演者もスタッフも女性が多いじゃないですか。僕自身は女性が働くことになんの違和感もないんですけどね。
中谷 でも日本のジェンダーギャップ指数は、156ヵ国中120位、政治においてはなんと147位です。
田中 そんなに遅れているんだ!
中谷 今回、凛子を演じるにあたって、世界の女性リーダーについて調べました。現在ドイツ語圏のオーストリアで暮らしているので、ドイツのメルケル首相は身近に感じますね。EU議長のウルズラ・フォン・デア・ライエンさんは7人の子どもの母親です。ニュージーランドでは現役の女性の首相ジャシンダ・アーダーンさんが、事実婚の相手との間の子どもを出産し、産休を取得しましたよね。