節子さんの(72歳)場合

うつになった娘と、反抗する孫を抱えて極限状態

不倫した娘に苦しむ親もいれば、夫に不倫された娘のケアに奔走する親もいる。5年前、節子さんのもとに、温かい家庭を築いていたはずの47歳の娘が、14歳の多感な時期の孫を連れて戻ってきた。

「娘の夫が、3年間も不倫していたことが発覚したんです。相手の女性が自宅に電話してきて、『私もあなたの旦那さんも本気』とわざわざ娘に関係をバラした。娘が夫を問い詰めると、『彼女とは別れるつもりだったけど、その機会を逃してしまった』と平謝りしたそうです。でも生真面目な娘は夫の裏切りをどうしても許せず、離婚という道を選びました。遊び人とはほど遠いイクメン夫だっただけに、娘のショックは大きくて……。孫の前でも平気で『死にたい』と口にするほど、精神的に不安定になってしまったんです」

いつも娘が臥せっている布団がもぬけの殼。慌てて辺りを捜すと、裏庭でうずくまって包丁を握り締めていたり、近くの川辺やマンションの屋上に佇んでいたり。節子さんは、一時も娘から目を離せなくなった。

「見かねた夫が、『私はどこも悪くない!』と泣き喚く娘を無理やり車に押し込め、心療内科へ連れていきました。幸い医師との相性が良く薬も効き、症状は少しずつ和らいでいった。次第に家事をこなせるまでに回復して、通院から約半年後には自らスーパーで働きだしたんです」

ところが安心したのも束の間、今度は孫が派手な化粧をして、夜遊びをするようになった。節子さんが注意をしても「ウザい」とそっぽを向く。警察に補導されることも、一度や二度ではなかった。

「そのせいで娘はうつ症状を悪化させ、再び寝込むように。夫は『俺たちが見守っていれば、いずれ孫も落ち着く』なんて綺麗ごとを並べて、現状から目を背けているのが明らかでした。娘には反抗期がなかったので、私だって荒れる孫との接し方がまるでわからない。気づいたら娘の元夫に相談の電話をかけていたんです」

娘の元夫は、とうに不倫相手との関係を解消していた。

「連絡してくださったことを感謝します。すべての責任は僕にある。許されるなら娘を引き取り、一歩一歩溝を埋めていきたい。できればお嬢さんともやり直したい」

と電話口で号泣したという。

「この人は信用できる。不倫はほんの気の迷いだったんだって、すんなり思えました。だから家族に彼の言葉をひとつ残らず伝えたんです。けれど夫は『あんな男に、孫は任せられない!』。孫は『父親だと考えるのも嫌!』。娘は『あの人に子どもを取られるくらいなら、本当に死ぬ!』。みんな『なぜ、あいつと連絡をとったりしたんだ?』って私を責め立てて……。もう焦燥感と孤独感しかありませんでした」