「いざというときは、私が母を看なくてはいけない。いつでも介護ができるように、認知症サポーター講習を受講していたんです」(新田さん)(写真提供:新田さん)

自分を疑うくらいがちょうどいい

浦上 先ほど「早期発見が一番難しい」とおっしゃっていましたね。認知症の初期症状は人によってさまざまですが、新田さんのお母さまにはどのような症状がありましたか。

新田 5年前の夏のことでした。おやつがわりに食べてもらおうと、パンを用意して仕事に出かけたんです。帰宅後になにげなく「パン食べた?」と聞いたところ、いままでの母なら「うん、ありがとう」と言うのに、「食べたわよ! ひとつしかなかったわ!」と喧嘩腰で答えたんです。もうビックリしてしまって……。当時、母は86歳。「いつ認知症になってもおかしくない」と覚悟をしていました。症状のひとつとして攻撃的になることも知っていたので「ついに来たか!」と思いましたね。

浦上 すでに認知症について勉強をしておられたんですか。

新田 うちは父がいませんし、いざというときは、私が母を看なくてはいけない。いつでも介護ができるように、認知症サポーター講習を受講していたんです。

浦上 素晴らしいことだと思います。認知症を早期発見するためには、なにより正しい知識を得ておくことが重要ですから。

新田 すぐに認知症外来に予約を入れましたが、受診できたのは11月で、その間に母の攻撃性は消失していました。予約から受診まで3ヵ月もかかったことは予想外で、もっと早くに気づけたら、という悔いもあります。徐々に何度も同じことを私に尋ねるようになっていき、「さっきも言ったでしょ!」と私がイライラしてしまって、喧嘩になることばかりでした。

浦上 頑張りましたね。