「穏やかな病」ならではの闘い方がある

新田 母の様子を見ていたので、私も将来、認知症を発症するのではないかという不安があります。認知症は遺伝するものでしょうか。

浦上 日本人に関していえば、遺伝的要素によって認知症になる方は全体の1パーセント以下だということがわかっています。ただ不健康な生活習慣や体質は、家庭内で引き継がれると思っていたほうがいいかもしれません。いずれにせよ、アルツハイマー型認知症は20~30年かけて進行する病ですから、予防をはじめるのに早すぎるということはありません。

新田 20~30年かけて!? じゃあ私なんて、すでに進行がはじまっているかもしれない! 怖いですね。ああ、怖いなんて言ってはいけないんでしょうけど。

浦上 怖いと感じるのは、自然なこと。専門医の私だって避けられない病ですし、怖いですよ。鳥取は車がないと生活できませんから、あえて目的地から離れたところに車を停めて、歩く距離を増やしたり、そうやってメタボにならないよう日々気をつけています。新田さんは生活習慣に関することで、すでに何か気をつけていることはありますか。

新田 母の寝たきりの原因となった骨粗鬆症にならないよう、信号待ちの間にかかと落としを。赤信号のとき不審な動きをしている女がいたら、それは私です(笑)。体によい生活を送ることが認知症予防にもなると考えたら、だんだん前向きな気持ちになってきました。

浦上 認知症医療に関わって35年が経ちます。かつて私は「やっと死んでくれた」などと家族に言わしめる認知症はなんと恐ろしい病気だろう、と思ったものでした。でも今は少し違う考えを持っていますね。「予防すれば、絶対に認知症にならない」とは言い切れませんが、長い時間をかけて進行する「穏やかな病」ということは、予防や対策をする時間がたっぷりある、ということでもあるわけです。

新田 知識を得て正しく備え、対策すれば、人生の質を保つことができるのですね。私もさっそく生活習慣を見直してみます。

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