「怖いと感じるのは、自然なこと。専門医の私だって避けられない病ですし、怖いですよ」(浦上さん)(写真提供:浦上さん)

60代あたりから受診を考えてもいい

新田 そうこうしているうちに、母の記憶力は少しずつ低下。デイサービスに行きたくない、とも言うようになりました。

浦上 「出不精になる」のも、認知症の症状のひとつです。

新田 進行を食い止めようと、脳トレを勧めたこともあります。でも「日記を書いてみたら?」と勧めても三日坊主に終わるし、小学生向けの算数ドリルを渡せば「簡単すぎる!」とやめてしまう。「知的活動」の習慣をつけさせるのは難しかったです。

浦上 脳を活性化させる知的活動は、人それぞれに好みがありますからね。周囲が強引にやらせても、うまくいかないというお話はよく聞きます。

新田 早期発見が難しいのは、加齢による「もの忘れ」なのか、認知症の初期症状なのかわかりにくいということもありそうです。

浦上 年をとれば、誰だって人の名前が思い出せなくなったりする。だから60代あたりから、「認知症のサインかもしれない」と疑って、病院を受診されるくらいの気がまえがよろしいだろうと思います。

新田 高齢になると、会話に「認知症」「介護」といった単語が出ただけで不機嫌になったりするじゃないですか。家族は、認知症外来の受診をどのように勧めたらよいでしょうか。

浦上 最近は、ご夫婦で受診なさるケースが増えてきましたよ。夫が認知症ではないかと思うものの、切り出し方に悩んでいた女性は、「最近、私ももの忘れがひどいから一緒に検査してもらわない?」と誘ったところ、うまくいったそうです。