ドイツの芸術文化を大切にする姿勢は…
――コロナ禍では世界中の音楽家たちが「自分たちの仕事は緊急時に必要なのか」「今後どのように音楽を続けていけるのか」と自問自答した。ドイツは早くから「音楽をはじめとする文化を守る」と政府が宣言したが、それでも実態は厳しいものがあったという。
大進 各国政府の対応が注目されるなか、ドイツは芸術文化を大切にしている姿勢が素晴らしい、と言われてきた。それでも長い間コンサートが禁じられてしまったから、演奏家たちは不安だったと思う。1回目のロックダウンの時は、文化施設が最初に閉鎖されて、再開も最後だったから。
りあ 芸術家への経済的なサポートはロックダウン直後に行われたから、「ドイツは素晴らしい」とほかの国では報じられていたけれど……どこか、もやもやした気持ちは残っていた。
大進 そういう話を夫婦ですることもあったね。僕は仕事での自分とプライベートでの自分がまったく変わらないので、仕事に関する考えごとをそのまま持ち帰ってくることもある。
りあ 私たちは仕事の話を、家でもけっこうするほう。今度はこんな曲をやるとか、リハーサルはこんな感じだったよとか。ベルリン・フィルに入って、もう11年が経つのね。
大進 いまだに、毎回フレッシュな気持ちでステージに上がることができているのがありがたい。それがこのオーケストラの特別なところだし、コンサートマスターという役割のおかげなんだと思う。公演初日の朝なんて、すごくワクワクするからね。この仕事はいろいろ大変なことはあるけれど、喜びのほうがずっと大きい。