お茶を飲みながらみんなで話をする「平塚カフェ」〈写真提供:SHIGETAハウスプロジェクト(一般社団法人栄樹庵)以下すべて〉
2012年以降、厚生労働省による認知症施策として普及が進み、現在全国に6000ヵ所以上ある「認知症カフェ」。19年にカフェの運営をスタートし、その活動が注目されている「SHIGETAハウス」を取材しました。後編はともに時間を過ごす仲間の話しからーー〈取材・文:篠藤ゆり 撮影:SHIGETAハウスプロジェクト(一般社団法人栄樹庵)〉

<前編よりつづく

思いを共有できる仲間がいる

現在「SHIGETAハウスプロジェクト」にかかわるスタッフは26名。精神科医やソーシャルワーカー、介護福祉士、作業療法士など、もともと認知症にかかわりがある人だけではなく、弁護士や税理士、出版関係者など、職種は多彩だ。

スタッフのひとりである吉田周子さんは、友人のFacebookで「平塚カフェ」の存在を知った。「たまたま娘が通っていた塾の並びで。『カフェができたんだ、行ってみたいな』と思ったんです」

当時はコロナ感染拡大の前だったこともあり、お客さんは40名ほど。吉田さんはなぜか、「洗い物、手伝わなきゃ」と思ったそうだ。保健師の資格を持ち、歯科医院で働いている吉田さん。スタッフや平塚カフェの楽しい雰囲気に惹かれ、毎週火曜日、歯科の昼休みに手伝いに通うようになった。

「義母が晩年認知症になりました。『平塚カフェ』でいろいろな人とかかわるうちに、『義母にもっとこうしてあげたかった』『違う接し方があったのではないか』と思うようになって」

最近吉田さんは、さまざまな思いを共有できる仲間ができたことが喜びだという。

「信頼関係が生まれると、『この人になら話してもいいかな』とか、『頼ってもいいのかな』と思える。認知症であるなしにかかわらず、人と人が許し合えるのが信頼関係なのではないかと、『平塚カフェ』を通して感じました」