カータンさん(左 撮影=本社写真部)村井理子さん(右 撮影=霜越春樹)
老いていく親との日々を、コミックエッセイ『健康以下、介護未満 親のトリセツ』にユーモアたっぷりに描いている人気ブロガーのカータンさん。翻訳者・エッセイストの村井理子さんは、『全員悪人』で認知症の人の目から見た《現実》と、その戸惑いや苦しみを綴っています。50代、家庭、子育て、仕事……。共通点の多い2人が、今まさに奮闘中の介護生活について語り合いました。後編は介護の日々を発信する理由からーー(構成=福永妙子 撮影=霜越春樹、本社写真部)

前編「実母にできなかった後悔があるから、義母には最後まで」はこちら

ネタに昇華したほうが勝ち

カータン 親の介護に直面した最初の頃は、姉と2人だけでやっていました。だけど、高齢出産だった私は、50代になった今も子どもの面倒を見なきゃいけない。行き詰まってイライラし、出てくるのは恨み節ですよ。うちの両親はそれぞれきょうだいも多かったし、親の介護をすることもなく、今の私の年齢の頃、父は仕事ひとすじ。母は遊んだり、のんびりしたり、日々を楽しんでいました。「将来、子どもたちの世話にはならない」とも言っていました。それで姉と毒づきましたね、「私たちだけ、どうしてこんなに大変なの?」と。

村井 でも、いろいろグチったり、励まし合ったりできるお姉さんがいてよかったですね。

カータン きょうだい同士なら、親の悪口を言っても人格を疑われません。母が、「ああ、どこかに行きたい。ひとりになりたい」と言うのを「はいはい」と聞き流しながら、帰りの車の中で姉と声を揃えて、「行けるものなら行ってみろ!」とか。

村井 私には、グチを言える相手はいないけれど、夫には、「あなたが親の世話をしないなら私が全部やる。そのかわりエッセイに書くからね」と宣言していました。『全員悪人』にしても、義母の認知症のことなので、「よくこんなのを書いたな」と散々言われましたけど、ネタに昇華したほうが勝ちです。それに、発表することで認知症について誰かに伝えることもできます。今現在、介護中の方から「親の不可解な行動の謎が解けました」という感想もよくいただくんです。

カータン 私も、描くことで発散できるし、笑いにも変えられる。親に対して、「新しい経験やネタを提供してくれてありがとう」という思いです