既成のジャンルを超えた怪作『山田孝之の東京都北区赤羽』

山田孝之が本人として登場する怪作『山田孝之の北区赤羽』(写真提供:写真AC)

*『山田孝之の北区赤羽』DATA
放送:2015年1月10日~3月28日/(土)午前0時52分

原作、原案/清野とおる『東京都北区赤羽』『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』(Bbmf マガジン、双葉社) 構成/竹村武司 監督/松江哲明、山下敦弘 出演/山田孝之、山下敦弘他 プロデュース/太田勇 プロデューサー/清水啓太郎他 制作/テレビ東京、松竹撮影所

山田孝之ほどつかみづらい俳優はいない。そしてそれは、本人そのもののとらえどころのなさでもあるだろう。

この作品は、そんな山田の不思議な魅力にあふれた快作にして、怪作である。

原作は、清野(せいの)とおるが自らの赤羽での生活を漫画にした『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』。だがここでは、清野役ではなく、山田孝之が本人として登場する。

カメラは、赤羽に暮らす山田孝之のひと夏の姿をとらえる。それは、ドラマのようでもあり、ドキュメンタリーのようでもあり、またどちらでもない既成のジャンルを超えたなにかでもある。

 

リアルのようでフェイクのような

山田孝之の赤羽の簡素な部屋に綾野剛が遊びに来る場面もいいが、実際に赤羽に住むユニークな人びとが続々登場する場面が、やはり断然面白い。

元AV男優で6度の離婚歴を持つ居酒屋「ちから」のマスター、サングラスをかけた強面の「ちから」の常連客・ジョージさん、歯に衣着せぬ毒舌の速射砲を客に浴びせるタイ料理居酒屋のママ・ワニダさん、などなど。いずれ劣らぬ濃すぎる面々である。

冒頭、山田孝之は、役と自分を切り離すことができなくなり、苦悩している。そのとき、清野とおるの原作漫画に出会い、赤羽に行き自分を見つめ直すことを決意。映画監督・山下敦弘に自分の姿を記録するよう依頼する。

この導入からして、リアルのようでもあり、フェイクのようでもある。深読みをしようと思えばいくらでもできるが、それこそ山田孝之の思う壺にも思えてくる。だから、あまり難しく考えず、ただ純粋に面白がるのが、案外正解なのかもしれない。