極めて《政治的》な存在である彼女

ずいぶん昔のことだが、いちど石岡瑛子論のようなものを書いたことがある。その一部を再録してみよう。

彼女のことを陰で「ガミちゃん」と呼ぶ業界の人たちがいた。ガミガミ怒鳴る骨っぽい女、というのが彼らの粗雑な印象だったかもしれない。

彼女には私の本のブックデザインを何点もやってもらっている。第一エッセイ集『風に吹かれて』の文庫本を皮切りに、「戒厳令の夜」を雑誌に連載したときは、毎号のイラストレーションからポスターまで担当してもらった。その赤味をおびた挿画は、登場するナチのファシストまで鮮かなエロティシズムの魅力を発散していた。

石岡さんが手がけた『戒厳令の夜(上)』(新潮社)のカバーデザイン