絵だけで食べていくためのハードルはかなり高い

画家として生きるためのギリギリの月収は、いくらだと思いますか。

アトリエでキャンバスに向かう中島さん(写真:CCCメディアハウス)

僕の経験と弟子たちの実情から見ると、月16万円から17万円。ぜいたくはまったくできませんが、それだけあれば、ぎりぎり絵を描いて食べていくことはできます。

年間にすると、約200万円です。

この200万円を稼ぐには、どうすればいいでしょうか。ギャラリーの大きさにもよりますが、1回の個展に必要な点数は20点から40点くらいです。逆にいえば、最低でも20点描けなければ個展は開けません。

百貨店の最低価格といわれているのが、以前は号3万円でした。2021年現在は少し下がって、号1万5000円から2万円といわれています。

号2万円の画家が、10号の大きさの絵を30点描いたとします。この場合、1点の作品の価格は20万円(号2万円×10号)です。20万円×30点で完売したとして、売り上げは600万円。作品が売れても手元に残るのは、3割くらいです。

1点の作品の内訳としては、百貨店が3割、出店しているギャラリーが3割、画家が3割、あとの1割は使途不明、あるいはお客さんへの割引などに使われることが多いです。

20万円の作品が1点売れた場合、

百貨店   6万円

ギャラリー 6万円

画家    6万円

割引等   2万円

となります。30点売れたとしても、画家の手元に入ってくるのは180万円。200万円には手が届きませんので、あともう2点から3点は描く必要があります。

いまは、この200万円すら超えられない作家が多いのが実情です。

僕が描いているような写実的な作品の場合、点数を多く描くのは大変です。20代の若い頃は、最大で年間80点くらい描いていました。これは、4日に1枚のペース。寝る間も惜しんで、ずっとキャンバスに向かっていることで、描くことができました。

ですが、新人の場合は、年間30数点描くのも売るのも、簡単ではないと思います。

しかし、画家として食べていくためには、最低でも号2万で10号以上の絵を年間30点強生み出し、売らなければならない。

これが画家として生きていくための、業界の基準です。ルールといってもいいのかもしれません。いかに、いまの日本のマーケットで画家として食べていくことが難しいかが、この数字に表れています。