「画家は死んでから有名になる」「死んでから値段が上がる」のウソ

「画家は生前無名でも、死んでから有名になる」

「死んでから、作品の値段がぐんと上がる」

こんな言葉を業界の中でも外でもよく聞きます。

生前恵まれなかったとしても、死後、価値が上がるのがアーティスト。こんな幻想を抱いている人は、多いのではないでしょうか。

はっきり言いますが、これはウソ八百です。

「でも、ゴッホとか、死んでから有名になったんでしょう?」と言う人もいます。それでは、フィンセント・ファン・ゴッホ以外に生前無名で死後有名になった画家を、何人挙げられますか?

ポール・ゴーギャン、アンリ・ルソー、ヘンリー・ダーガー、石田徹也(いしだてつや)……僕は10人も挙げられません。

生前無名で死後有名になり値段が上がることは、長い長い絵画史の中で奇跡的に起こることはあります。ですが、それは買う人が多くなれば宝くじの1等に当たる人も出てくる、ということと同じです。

1000万分の1の確率を信じて宝くじを買うのは夢ある行為かもしれませんが、死後自分の作品が有名になると夢見るのは、画家としてあまりに無知で無謀です。

いまに名を残す偉大なアーティストは、皆生前「天才」と呼ばれていました。そのことからも自身の作品を売って世間に認知されることは、重要だと思います。

※本稿は、『完売画家』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。


『完売画家』(著:中島健太/CCCメディアハウス)

これまでに描いた700点の絵画がすべて完売。人気洋画家がその経験と冷静な分析から語る、芸術の世界での生き方と仕事の哲学。