一軒家に住むのが当たり前

その後の理事会も驚くことばかりだった。役員たちは「管理会社に任せておけばいいだろう」という考えしかなく、「会計作業は不要」などと、隙あらば役員の仕事を減らそうとする。

何より驚いたのは、水道料金の支払い方法が、管理費とともに銀行口座から引き落とされる仕組みだったことだ。昭和の頃ならともかく、いまは使用者が個別に水道局に払うのがほとんどだろう。調べてみると、一括検針で建物一棟払いを選べば個別で払うより安くなるという。

管理会社が差益を管理費に組み込み、住民に還元すると決めたらしいが、理事会が会計作業すらしないと言っているのだ。それなら個人で納めるべき、と主張した私と役員たちとの話し合いは、またしても平行線に終わった。

この地域は一軒家に住むのが当たり前で、分譲マンションの歴史が浅く、管理会社もいい加減で頼りにならない。だから自分なりに法律も調べあげて建設的な意見を言っていたつもりだが、せっかくの休日にわざわざ出席している《お父さん》役員たちからは「めんどうなバアサンだ。余計な口出しをしてほしくない」と煙たがられた。私は、ようやく手に入れた終の棲家をよくしたいと思っているだけなのに……。

理事会に出るたびカッカしてしまい、ストレスは募るいっぽうだ。がん治療中の身によくないと悟った私は、任期満了前に役員を辞めることにした。将来このマンションが大規模修繕工事の時期を迎えるとき、積立金不足などの問題が起こらなければよいが。まあ、どうせ私はこの世にいないだろうから、関係ないけれど。

「老後はマンション暮らしが一番」と思っていたが、地方のマンションに住んで初めて、さほど快適ではないかもしれないと考えを改めた。ただ、買ってしまった以上、あとはトラブルなく穏やかな老後を過ごしたいものだ。ここが終の棲家だなんて……と後悔にかられる今日この頃である。

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◆解説◆

老後問題解決コンサルタントの横手彰太さんが作成する「老後年表」によると、「世代とともにリスクは変わる」とか。
▼63歳:30代で購入した自宅に不具合が生じ、リフォームするケースが多く、リフォーム詐欺などのトラブルにも気を付けたい 
▼69歳:住み替えのラストチャンス。戸建ての自宅を売却しても、古い家屋の売却価格はほぼ土地の価格なので、お金の計算は慎重に
*年齢はあくまでも目安です。遭遇する確率が高い年齢を選んでいますが、横手さんの相談者に多い傾向が反映されている場合もあります。


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