自信満々に披露した句にも「容赦なし」!
ちなみに、数え切れないほど作ってきた俳句の中で、私がとりわけ気に入っているのが、「雪と銀座のイルミネーション」というお題で詠んだ、次の一句です。
〈義士の日のまねきに白く降る夜空〉
「義士の日」というのは、忠臣蔵でおなじみの赤穂浪士たちが、吉良邸に討ち入った旧暦12月14日。そして、「まねき」は出演中の役者の名前が書かれた「招き看板」のことです。
『仮名手本忠臣蔵』が上演されている銀座・歌舞伎座の正面に、招き看板がズラリと並んでいる。冬の夜にしんしんと降り続ける雪が看板に積もって、白く染めあげていく―。目の前に降る雪と、浪士たちが見上げた雪を重ねた句です。
どうです、なかなかでしょう。
我ながら「役者ならではの発想」と、番組で自信満々に披露しました。
ところが、なっちゃんの判定は、昇格なしの「現状維持」。完全に予想外です。
「なんでだよっ!」。思わずかみ付く私。
すると、なっちゃんは一言。
「『まねき』が看板のことだなんて、いまの人にはわからないでしょ」
容赦のない、ド正論の刃。真っ白な雪が、紅い血で染まっていきます。
ホント、手加減というものを知らないババアですよ。褒めて損した!
※本稿は、『人生70点主義―自分をゆるす生き方』(講談社)の一部を再編集したものです。
『人生70点主義―自分をゆるす生き方』(著:梅沢富美男/講談社)
CMにテレビに毎日大活躍。「いま一番売れている70代」梅沢富美男が贈る「読むと元気になる」エッセイ集!