「リハビリというと、つらいイメージを持たれるかもしれませんが、私にとっては楽しくてたまらない時間でした」

リハビリは楽しい時間

事故後に運ばれた病院を3週間で退院すると、その後はリハビリ専門病院に5週間入院。リハビリというと、つらいイメージを持たれるかもしれませんが、私にとっては楽しくてたまらない時間でした。昨日できなかったことが今日できるようになる。できることが増えていくから。

理学療法士さんのサポートもあり、事故直後、ほとんど動かなかった右半身は順調に回復。歩く時は杖をつきますが、右足はかなり動くようになりました。右手も、動きはちょっと遅いものの、お箸は持てるし、字を書くこともできます。

私の右腕は、腱が切れて、骨が一部欠損し、神経がズタズタで脳の指令もうまく伝わらないはずなんです。壊れた脳の神経は元に戻らないので、トレーニングによって新しい神経の回路ができ、筋肉を動かしているのではないかとのこと。人間の体は、本当にすばらしいですね。

脳のほうも、退院直後はものごとの手順がわからなくなり、戸惑うこともありました。例えば、退院した日にチルドの餃子を買って帰ったのですが、いざ作ろうと取り出してもどうすればパッケージの写真のようになるのか、わからない。何かをつけて食べた気がするけど、なんだっけ? と、キッチンで立ちすくんでしまいました。

しかし、週に2回のリハビリに通ううち、日常生活で困ることはほとんどなくなりました。そして、事故後に辞めた薬剤師の仕事に復帰したいと思えるようになり、職場を求めてドラッグストアの面接に。

すると、「患者さんの気持ちがわかるあなたのような薬剤師にこそ、うちに来てほしい」と言っていただいて。障害を負った経験を生かせる場があることがうれしかったですし、医師にはもう無理と言われた薬剤師の仕事に再び就けるなんて、本当に出会いにめぐまれているなと思いました。

ただ……今思っても胸が張り裂けそうになるのは、子どもたちのこと。事故当時、娘は中学3年生になったばかりでした。なぜかいつまでもお母さんが帰ってこない、でも怖くて父親にも兄にも聞けない。病院に会いに行っても、子どもの自分はICUに入ることができない。

娘の様子がおかしいことに気づいた中学の先生が声をかけてくださり、娘はそこで初めて泣いたそうです。どれだけ不安だったか……。娘ばかりではなく、息子もきっといろいろな思いを抱えていたことでしょう。本当に大変な思いをさせてしまいました。