ずしりと重い2つの金メダル

パラリンピックは輝かしい場所

こうして迎えた東京パラリンピック。もちろん金メダルを目指していましたが、正直なところ、取れるとは思えなくて。

飯島さんから、「オリンピック、パラリンピックというのは、とっても輝かしい場所なんだよ」と何度も聞いていましたが、本当にその通りでした。その「場」の力に圧倒されず、自分の力を発揮するため、試合前はとにかく集中。余計なことを考えないよう、分刻みで予定を立てました。

出場したタイムトライアルは、1周8キロコースを2周するタイムレース。どのタイミングでどれくらい体を倒すか、どこでブレーキをかけ、どこでパワーを出すのか。事前に頭にたたき込んだ通りに走りました。そして、終盤にスパートをかけてグループから抜け出し、ゴールへ。50歳で手にした金メダルは、想像よりもずっとずっしりと重たかった。

真っ先に、子どもたちに金メダルと花束(ビクトリーブーケ)の写真を送りました。花束についている五輪キャラクターのソメイティの金色のぬいぐるみを見て、息子が「欲しい!」と言うと、娘も「私も欲しい!」と。(笑)

「お母さん、兄妹喧嘩にならないように、もう一つ金メダルを取るから」と言って、次のロードレースも頑張ろうと気を引き締め、コーチと作戦会議をしました。これがぴったりはまり、レースは思い通りの展開に。走っている私自身が驚いてしまったくらいです。

こうして手にした2つの金メダル。私には、どうしても直接報告に行きたい場所がありました。それは、事故後にお世話になった病院です。大きな障害が残ることを理解した時、私は主治医に「なんであのまま死なせてくれなかったんですか」と暴言を吐いたそうなのです。

先生にそのことを謝り、「生かしてくれてありがとうございました」と言うことができました。理学療法士さんたちは笑顔で、「本当に大変だったんだよ。すぐ『死ぬ』とか言うし」って。前向きにリハビリに取り組んできたつもりだったけど、私にもそういう一面はあったのですね。(笑)