乗ったら共演の袴田吉彦くんがいた
新幹線がホームに入ってくるたびに、次こそ間違えてはならぬ、と電光掲示板をしっかりとみる。
次だ。
やまびこ・つばさ と書いてある。
電光掲示板と、キキキーと入ってくる新幹線を交互に見た。間違えるわけにいかない。誰かに聞きたいが、誰もいない。
わたしは、入ってきた新幹線から顔を出して指差し確認しているメガネの車掌さんに
「山形に行きますか?山形に行きたいのです」
と確認した。
「大丈夫ですよ、山形」
メガネの車掌さんは優しく諭すように教えてくれた。
11号車に乗り込み自動ドアが開くと、共演の袴田吉彦くんがいた。
「青木さん、上野から?」
「間違えちゃった。降りて、乗ったのよ」
「よくわからないけど、なにしてんの」
説明もできずにテヘヘ、と笑いながらとりあえず空いていた袴田くんの後ろの席に座ってようやく落ち着いた。
窓の外を見ると、すでに真っ暗だった。星も月も出ていない。夜空は曇っているようだ。都会からどんどん離れていく夜の街並みが見えた。
一息ついて思いを馳せた。世の中全て必然なんだろう。無意味なことなんてなにもない。きっとこの出来事だって大いに意味がある。
一体、今日の上野の1時間の待機に、人生においてなんの意味があったのだろうか(なにもないよ!)
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青木さやかさん自身が朗読して作成した単行本『母』のオーディオブックが配信開始されました。https://www.audible.co.jp/pd/B097T243BN