時間を持て余した私が再開した<農耕接触>

私にとって、コロナ禍でいちばん変わったことと言えば、私のライフワークであった畑仕事への熱が復活したことでしょうか。

40代の頃、私は山梨県の河口湖に家を建てました。そして毎年、畑でさまざまな野菜を育ててきました。畑仕事への熱が冷めたわけではなかったのですが、忙しくて時間がなかなか取れない時期が続いていたのです。

ところが、コロナ禍で公演がバタバタと延期・中止になっていったのが2020年の2~3月頃のこと。これがちょうど、畑を耕す時期と重なっていました。

そこで、自宅にこもって、再び野菜づくりに精を出すことにしたのです。土に還る前の土いじりですね。

綾小路きみまろさん「カボチャ、ナス、ニンジン、大根など植えました。土に還る前の土いじりですね。」(写真:本社写真部)

富士山の残雪が、春が近づくにつれて鳥のような形に浮かび上がる時期があります。地元では「農鳥(のうとり)」と呼ばれて、近隣の農家にとっては、それが見える頃が畑を耕し始めるサインになっています。江戸時代から続く地元農家の習慣だそうです。

私もその農鳥を確認して、カボチャ、ナス、ニンジン、大根などなど、いろんな野菜を植えました。

日本に新型コロナウイルスがやってきて、世の中が騒がしくなっていた頃、私は濃厚接触ではなく《農耕接触》していたわけです。