チャレンジした人にしか味わえないものがある
あの時私は、「これたぶん成立しないロケだと思います」とは言えませんでした。
それは上下関係から言えなかったのではなく、こういう想定だとうまくいかないという経験を持っていなかったのです。
スタッフも、一生懸命に私をPRしてくれようとしていましたから、余計に言えませんでした。
知名度がなくてつらい、このことを痛感したからこそ、知名度がなくて仕事がうまくいかない後輩のこと、痛いほどわかります。そう考えると、あの時私は貴重な経験を得たのだと思います。
でも、今でも覚えているくらい恥ずかしかった。若い頃はそんな気持ちになることがとても多かったのを覚えています。
ただ、あの頃のほろ苦い思いがあったからこそ、今、誰かの悩みに寄り添えます。また、「えいや!」とやってみたからこそ、自分の幅が広がったのだと思います。
いくつになっても恥を捨て、チャレンジすること。その素晴らしさは、恥を捨ててチャレンジした人にしか味わえません。
※本稿は、『伝える準備』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
『伝える準備』(著:藤井貴彦/ディスカバー・トゥエンティワン)
SNSや動画でのコミュニケーションが盛んになり、会話自体が少なくなっている現代。今後、会話するスキルは不要になっていくのかもしれません。ただ、どのようなコミュニケーションでも、「言葉」を避けて通ることはできません。本書では「言葉」のプロであるアナウンサー藤井貴彦さんが、どのように言葉を精査し、どのように伝えるか、実際に行っている「言葉の習慣」を語ります。