好奇心が消えたら終わり

また、4 度目のブロードウェイ出演が決まっての率直な思いについてはこう語っている。

「まず、『本当にやれるのか』と自分に問いかけをしました。ドラマに打ち込んでいるときは運動らしい運動ができません。ダンサーとしてのスキルを整えられる環境にいないので、普段からブロードウェイに立っているみなさんと同じようにできるのかと。

30代のときは体も動いたし、やりたい、やってやるという熱意で乗り越えてきました。でも改めて今回やれるのならやりたいと、出演を決めました。何より、私のなかで、好奇心が消えたら終わりだと思っています。挑戦しないわけにはいきません」

日本では数々のヒット作で主演を務め第一線で活躍する米倉さんだが、ブロードウェイの舞台で日本人が主演を務めるのは、並大抵のことではない。『CHICAGO』は、異文化融合、多様性、インクルージョンの先駆けでもあるミュージカルだ。

公演キービジュアル:Junji Ishiguro

1996 年にブロードウェイでリバイバル上演されたこのバージョンの『CHICAGO』は、過剰な演出を排除し、俳優たちの力量が発揮されることによって、アフリカ系アメリカ人俳優が 1920年代の弁護士を演じるなど、「人種と時代考証を超えたキャスティング」が実現している。日本人女優が、「アメリカ国籍の白人」の設定であるロキシーを演じることも、このミュージカルならではの柔軟性によるもの。

ブロードウェイでは 2014 年 に、アフリカ系の俳優が『シンデレラ』のシンデレラ役や『オペラ座の怪人』のファントム役を演じるなど、人種を超えたキャスティングが実現しているが、『CHICAGO』はまさにその先駆けといえる。