動揺しないために必要なこととは

前の節で、「決して動揺しないこと」が大切だとお話ししました。では、そのために必要なことは何でしょうか。きつく叱ることでも、慌てて病院に連れて行くことでもありません。それは、いま何が起きているのか、状況を正しく理解することです。

朝、起きられず、学校に行きたくても行けないという病気があるということを、まずよく知ってください。すっかり自信をなくしてしまっている子どもたちには、「そんな自分であっても受け入れてくれる」と思える家庭があることが何よりも大切です。

焦らないことも重要です。初診で来られる子どもの親を見ていますと、「明日からでも、学校に行けるようにしてほしい」という焦りが顕著です。

しかし、残念ながら、それはできません。どんなにすばらしい治療を行ったとしても、起立性調節障害はじっくり時間をかけてしか治すことができません。その期間は数か月、場合によっては年単位です。ですから、うまくつきあいながらじっくり治していくという態度が不可欠なのです。

「正しく理解する」にしろ「焦らない」にしろ、それは、「朝、起きられない」を受け入れるということに、ほかなりません。現実を見据え、いま何が起きていて、何が必要なのか冷静に考えるようにしてください。

※本稿は、『新装版 うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。


新装版 うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある』(著:森下克也/CCCメディアハウス)

「怠け」と見られがちな思春期の「朝、起きられない」に医学的な根拠を求め、起立性調節障害という疾患を世間に知らしめる先駆的な役割を果たした書籍に大幅加筆修正!最新の知見、症例を盛り込んだ新装版をここに。