1つの句から話題が尽きない
小林 あっ、清書したものが来ました。どれどれ。
宇多 普通、句会はもっと人数がいるから、どれが誰の句かわからない。それで点数を入れたりして楽しむわけだけど、今日は3人だから、誰の句かすぐわかっちゃうわね(笑)。南さん、「鞍馬天狗」というと、誰が思い浮かぶ?
南 アラカン(嵐寛寿郎)ですね。
宇多 我々の世代はそうよね。小林さん、アラカンはご存じ?
小林 えっと、名前は。
南 じゃあ、最初の句は小林さんじゃないか。
小林 フッフッフ、と思うでしょう。これ、私なんです。カギカッコがついているので、本なわけです。
宇多 えっ、映画を見ているんじゃなくて、本を読んでるの?
小林 はい。大佛次郎の『鞍馬天狗』を読み始めたら、いきなり春の描写がすごいんですよ。日本語の表現力が。それをいちいち噛みしめつつだから、なかなかページが先に進まないんですけど。
宇多 へぇ。映画では杉作少年を、美空ひばりが演じたり……。
南 松島トモ子も。
宇多 当時の子どもは、みんな布を顔に巻いて、「鞍馬天狗ごっこ」をやったでしょう。
南 鞍馬天狗の覆面らしくするのが難しい。ボール紙を入れたり。