女性30人に分け隔てなく接して
最初、先輩と共に就いたときは、ものすごく緊張したのですが、「そうか、新人キャスターか」「山田くんは、どこに住んでいるんだい?」「お父さんは何してるの?」などと初回からフレンドリーに話しかけてくれた蝮さん。
上は34歳、下は20歳と、けっこう年齢が離れた女性ばかり、当時は30名以上も在籍していたキャスタードライバー全員に、分け隔てなく接してくださいました。今から思えば、これはすごいこと。これだけ若い女性が集まっている現場だと、多くの男性スタッフは自分の好みで“御指名”をしてきたものです。
『ミュージックプレゼント』は、デスクがシフトを組むので、スタッフの意向はほとんど反映しなかったとはいえ、キャリアやキャラクターやルックス無関係で全員に均等に接してくれた蝮さんは“愛の人”だと思います。
パーソナリティーの一人としてラジオの特性や影響力を誰よりも理解し、現場では、おなじみの「ばばあ」「じじい」を連発する蝮さんは、とにかくパワフルだし、アクティブでした。
現場に到着すると、誰よりも先にクルマを降り、周囲の景色を見渡す蝮さん。もちろんラジオだから、リスナーの方にそれは見えません。ですから例えばそこに石畳があると、蝮さんは急遽、下駄に履き替えるのです。テーマ曲が流れはじめ、近石さんが「蝮さ~ん」と呼びかけても、すぐには返事をせず、「カランコロン」という足音から放送に入る。
スタジオの近石さんもよくわかっていらして、しばらくその音を聴かせた後に、「蝮さん、今日は、お寺かい? それとも神社かな?」と訊ねるのです。そこで、リスナーの皆さんの想像力もかきたてられるというワケ。