「山田くんは、その声がいいんだよ」

蝮さんから言っていただいた言葉は数あれど、いちばん覚えているのは、「山田くんはテレビのキャラクターなんだよな」ということ。その真意をきちんとうかがうことはできませんでしたが、その後、放送作家になり、テレビの世界にも迷わず飛び込んでいけたのは、蝮さんのこの言葉があったからだと思っています。

「山田くんは、その声がいいんだよ」と言ってくださったこともありました。当時、蝮さんの御友人が商品化しようとしていたカセットテープのテスト録音をさせていただいたのです。その土地の名所や名産をガイドする、いまでいうナビゲーターのような内容だったと記憶しています。

結局、商品化はできなかったと思いますが、TBSとは別のスタジオに蝮さんと籠り、蝮さんにレクチャーを受けながら、ナレーションを初体験したこと。子どもの頃、あれだけコンプレックスだった自分の声を褒めてくれて、特別な機会を与えてくれた蝮さんには感謝してもしきれません。

こうして書くと、私が蝮さんに贔屓をしてもらっていたようですが、そうではありません。繰り返しになりますが、蝮さんはキャスタードライバー全員に公平であり、誰に対しても愛情をもって接し、フェードインではなく、カットインでコミュニケーションを取り始める方なのです。

もちろん人情味もあって、スタッフや私たちに“色恋沙汰”があると、弱い立場の女性サイドに立って、ハッキリ言葉にしてくださったものです。だからと言って相手男性を追い詰めるのではなく、冗談めかしてくださるので、男性側もずいぶん救われたはずです。

週刊誌の連載や講演など、お仕事の幅を広げられて久しい蝮さんですが、もっともっと蝮さんの珠玉の言葉や、人となりが多くの方に届くよう、微力ながら尽力していきたいです。そして、蝮さん、長生きしてくださいね。
 

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