「嘘はいけないよ。聴いている人にはバレちゃう」

また、現場が「もんじゃ焼き」のお店だとすると、もちろん、鉄板に具材をジュ―ッと流し込むところから始まります。そのお手伝いをしていたとき、「水を流したほうが、いい音が出るんじゃないですか?」と鉄板にコップの水を流した私に対し、「山田くん、嘘はいけないよ。聴いている人にはバレちゃうよ」と叱ってくれた蝮さん……。

あぁ、ラジオの放送というのは、こんなにも“音”が大切であり、“演出という名の嘘”はリスナーの方に伝わってしまうのだということを“ラジオのプロ”にもなられた蝮さんから学ばせてもらいました。

目配りもすごくできる方で、例えば現場に杖をついていらした方には率先して椅子を用意し、車椅子で見える方に対しては、「そこ、開けてあげて」「いちばん前にしてあげて」という気遣も。

記憶力も抜群で、一度、伺ったお店や会社のことは必ず覚えていて、「あのハゲの社長は元気なの?」とか「あのときのクソガキがこんなに大きくなりやがった」などと仰り、その記憶がすべて正しいことにも毎回、驚かされたものです。

山田さんへ送られた、毒蝮三太夫さんのサイン

「じじい」「ばばあ」は最初からウケたワケではないそうで、その昔は、怒って帰ってしまった方もいらしたとか。でも、それが蝮さんのトレードマークになってからは、「蝮さんに『ばばあ』と言われたら長生きできる」というジンクスまで生まれたほどです。

『ミュージックプレゼント』は、放送回数こそ減りましたが、現在も続いていて開始から既に半世紀以上。毎日、大きな声でたくさん話していらっしゃるからでしょうか。周りはどんどん年齢を重ねていき、見た目も老けていくのですが、「蝮さんは本当に年をとらない」というのがTBS関係者の定説になっています。