複雑な感情の〈綾〉を見抜け

感情は単体で表情に表れるとは限らず、複数の感情が同時に表情に表れることがあります。これを混合表情と言います。ここで、練習問題を通じて混合表情に慣れて頂きたいと思います。

それでは問題です。以下の表情は、どの表情とどの表情の混合でしょうか。

解説の前に混合表情の読みとりポイントをお教えします。それは、表情を上下に分けて部分で観る、ということです。部分的に観ることで全体の印象に惑わされず、正確に個別の表情の特徴を抽出することが出来ます。

それでは解説です。

(1) は、(エ) 幸福+驚きです。口角と頬が引き上げられる表情から幸福を、口が開かれ、上まぶたと眉が引き上げられる表情から驚きを読みとることが出来ます。

(2) は、(オ) 幸福+嫌悪です。口角と頬が引き上げられる表情から幸福を、鼻のまわりにしわが寄せられる表情から嫌悪を読みとることが出来ます。

(3) は、(ア) 恐怖+驚きです。口角が水平に引かれ、下まぶたに力が込められている表情から恐怖を、口が開かれ、上まぶたと眉が引き上げられる表情から驚きを読みとることが出来ます。

(4) は、(イ) 怒り+驚きです。上まぶたが引き上げられ、眉が中央に寄りながら引き下げられる表情から怒りを、口が開かれ、眉が引き上げられる表情から驚きを読みとることが出来ます。

(5) は、(カ) 怒り+嫌悪です。唇が上下からプレスされ、眉が中央に寄りながら引き下げられる表情から怒りを、鼻のまわりにしわが寄せられる表情から嫌悪を読みとることが出来ます。

(6) は、(ウ) 嫌悪+驚きです。鼻のまわりにしわが寄せられる表情から嫌悪を、上まぶたと眉が引き上げられる表情から驚きを読みとることが出来ます。

その他、様々な表情の組み合わせが考えられます。なお、混合表情は大抵二つの感情、多くて三つの感情表現から構成されます。

みなさんもぜひ自身のお顔で混合表情を作り、その表れ方がどのようなものか、確認してみることをオススメします。

※本稿は、『裏切り者は顔に出る』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


裏切り者は顔に出る』(著:清水建二/中公新書ラクレ)

「微表情」とは、0.5秒だけ人の顔に表れる無意識の表情。この微表情は、文化や民族、性別、年齢、時代、さらには生まれつき目が見えるか否かを問わず、私たちの顔に表れる。この微表情を読みとる技術は、科学を下地にした全く新しいコミュニケーション・スキルだ。犯罪捜査にも協力してきた著者が、その真髄を披露する!