ネコ1匹くらい楽勝

両親が離婚して以来、わたしは母とは口も聞かず、ごはんも別。父が出て行った実家は部屋が余っていて、わたしは2階の一番奥の8畳ほどの部屋を自室として使い始めた。

その広さがあればネコ1匹くらい楽勝である。黙って内緒で飼えばバレないのではないか。

本連載をもとに青木さんが書いた初の小説『母』(中央公論新社刊)

わたしはすっかり日が沈んだ空をみて、ミヤミヤと言う仔猫の頭をしっかりとダンボールに押し込んでフタをして、自転車のカゴに乗せ、左手でダンボールをおさえながら ゆっくりと自転車を漕いだ。空はどんどん夜の暗さになっていき、わたしはやっぱりネコを連れてきてよかったのだと思った。

家に着いたらダンボールを抱えて2階に直行し、部屋にダンボールを置くと、また下におりて洗面所から柔らかめのバスタオルをとり、牛乳を温めて小皿に注ぎ、2階に急いだ。仔猫は、ミヤミヤと鳴きながら、部屋の中を物色していた。ドアの近くにミルクをおいて、タオルをダンボールの中に入れてベッドらしきものを作った。

NPO法人「twfの会」での活動がスタートしました。ボランティアスタッフが交代しながら、24時間体制で動物の世話にあたっています

楽しくなかった毎日が少し楽しくなりそうで、帰りたくなかった家に帰らなくてはならない理由ができた。さみしい女子高生と、ダンボールにいた仔猫との8畳の生活が始まる。