「さやかんちの化け猫」とよばれるように

26歳でわたしは家を出た。

何より、ミヤと別れるのが辛かった。既に10歳を超えていたから、次に会う時はもう会えないかもしれない、と思った。だけど、ミヤは長生きをしてくれて、ミヤが生きてるうちは、と思い、帰りたくない実家に東京からミヤだけを見に帰った。わたしが35歳になった時、ミヤはまだ生きていた。もう20年生きていた。

いま、うちには3歳の兄弟の保護猫、シティとクティがいます。今ではネコのミヤの話をしながら、2匹のネコと遊んでいます

高校時代の友人は
「え、まだ生きてるの!」
と驚いた。

外によく出ていたミヤのことを友人は
「さやかんちの野良猫」と呼んでいたが、
「さやかんちの化け猫」と呼び名が変わっていた。

ミヤがだいぶ弱っていると聞いて実家に帰ると、ミヤはもうわたしのことを見なかった。ミヤは母のことしか見なかった。わたしは、寂しかったけれど、こんな薄情な飼い主のことミヤが忘れてよかった、と思った。

実家の玄関の数ある写真立ての中のほとんどが、ミヤの写真だった。母は、それはそれはミヤを可愛がった。ミヤが死んだと聞いたとき、わたしは聞かなかったことにした。生き物の死に直面することができなかった。怖かったのだ。

責任を放棄したわたしが悲しむ権利などないような気がした。ミヤを思うと同時に「後悔」がやってきた。そこからわたしはミヤのことを思い出すのをやめた。

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