思春期に起こりやすい疾病利得
ここに、著者が主張する「起立試験の数字の示す血液循環の調節障害が、すべての症状の原因と考えるべきではない」ということの重要性があります。
疾病利得があると、症状がなかなか改善しないばかりか、治ったと思ったら別の症状が出てくるということが起きてきます。なぜなら、症状がなくなると学校に行かなければならないので、子どもは無意識のうちに治ることを拒否するからです。
親も、わが子が心の問題を抱えていることを認めたがらないので、身体面にばかり原因を求めようとし、結果として疾病利得を助長してしまいます。
この疾病利得は、言語化の能力に乏しい思春期のうちは、成人よりも起こりやすいと言われています。
このようなことを起こさないために、「起立性調節障害だから朝起きられない、学校に行けない」という単純な枠組みで考えるべきではありません。
起立性調節障害という概念の元になっている「自律神経の機能不全からくる循環調節の不全」は、あくまで身体的な状態を言っているにすぎず、その背景に何があるかが重要なのです。
疾病利得が認められたら、自己の内面と向き合えるように周囲は促していかなければなりません。疾病利得はある種の現実逃避なので、現実としっかり向き合い、どうするべきなのかを親子で考えるようにします。
もし、疾病利得が長引いてしまうと、ストレスの壁を乗り越えられない、つらいことは避けて通る行動パターンが身についてしまう可能性があります。