ストレスを受け止めきれない子どもの心

一般的に、子どもは現実逃避をします。その理由は、言語化能力の未熟さと近視眼的な視野しか持たないことによります。

強すぎるストレスを前に現実逃避をする子どもたち(写真提供:写真AC)

言語化能力の未熟さとは、文字通り、自分の考えや状況を的確に説明するための言葉が乏しいということです。語彙も豊富ではありませんし、表現方法も的確でありません。

つまり、論理的な思考能力が未熟です。すると、物事に対して感情的に反応します。

「いやだ」「つらい」「嫌い」といった言葉で返すしかなく、泣く、癇癪を起こす、キレる、黙る、引きこもる、といった行動につながるのです。

言語化能力の未熟は、現実検討能力の未熟をもたらします。遅刻がちである、欠席が長引いている。そのことで留年しそうであったとしても、身に差し迫った危機として認識できません。

たとえば、不登校で来院した子どもに、「学校に行っていないことを、どう思いますか?」と聞いても「わからない」。「留年したらどうしますか?」と聞いても「さあ」「考えてない」と首をかしげるだけ、ということがよくあります。

近視眼的な視野しか持たないとは、一、二年先の自分の将来像を、リアリティを持って考えられないということです。同時に、感情が優位であるがために、目先の欲求に流されがちです。

このことは、朝起きられないということに、ダイレクトにつながってきます。たとえば、朝、起きることができない、起きようとしても強烈な眠気を払拭できないというとき、「このままだと一年後は留年してしまう」という危機感よりも、目先の「眠い」が勝ってしまうのです。

つまり、寝てしまうことが日々積み重なったとき、将来やってくるであろうデメリットよりも、いま、この時点で眠いから寝るという欲求が勝ってしまうのです。

思春期にあるべくしてあるこの二つの問題は、起立性調節障害の子どもの大きな心理的足かせとなっています。年齢が上がるとともに少しずつ改善していきますが、悪化させる要因として知っておくべきでしょう。