朝、どうしても起きることが出来ない子どもたちーー。治療するために大事なこととは(写真提供:写真AC)
朝、起きることができず、学校に行くことができない。でも夜になると、嘘のように元気になる――それが起立性調節障害です。思春期になることが多く、大人たちにはなかなか理解できません。心療内科と漢方の専門施設・もりしたクリニックの森下克也医師は「外見上は変わりなく、検査でも異常が見られないため、『怠け病』などと呼ばれて傷つき、引きこもりとなるケースも。治療するには子どもの心を理解し、彼らの目線まで下りることが大切」と言います。

起立性調節障害にかかったから学校に行けない?

そもそも起立性調節障害には大きく二つ、自律神経の機能不全が主で心の問題はあまり考慮しなくていい身体型と、心の問題が発症と経過に大きく関わっているストレス型があります。

長引くと、これらが混然となって「身体症状と精神症状の悪循環」を呈すると、『新装版 うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある』にて詳しくお話ししています。

しかし、起立性調節障害について書かれたインターネットの情報などを見ると、いかに血圧を上げ、自律神経の機能を改善するか、ということばかりが重要視されているようです。それさえ成されれば、朝も起きられるし、学校にも行くことができるかのように書かれているのです。

それは、身体型の初期においては正しいのですが、ストレス型や慢性例には当てはまりません。

もし、ストレス型または慢性例の子どもが「自分は起立性調節障害にかかったから、朝起きられないし学校にも行けないんだ」と思ってしまうとしたら、起立性調節障害を諸悪の根源と考え、いつしか「起立性調節障害だから、学校に行かなくていい」という心理状態になるかもしれません。

つまり、学校を休む理由として起立性調節障害を、無意識のうちに利用するようになるのです。これを疾病利得(しっぺいりとく)と言います。