今、全国には100を超える大衆演劇を演じる劇団があり、美しい女形をはじめとする役者たちが煌びやかな衣装で舞い踊るショーや歌、人情劇など、ほぼ毎日昼夜演目替えで公演しています。観劇できる場所も劇場はもちろん、センターやホテルの大広間など多くあり、舞台に造詣の深いライター・おーちようこさんも、その存在を知っていました。しかし、実際に観劇してみれば、想像していた以上に衝撃を受けたそうで――。
「お芝居好きなら、一度は観てほしい」と誘われて
かような世界、あるいは文化があることはなんとなく知っていました。
たとえば、今ではバラエティ番組のご意見番として登場する梅沢富美男さんが「下町の玉三郎」と称され、たいそう美しい女形だったとか、北野武監督の映画『座頭市』で話題になった愛らしい芸者姉妹の「おせい」を演じた美少女が、実は大衆演劇で注目の女形の方々(幼い時代を早乙女太一さん、成長してからは橘大五郎さん)だった、という程度。
あとは健康ランドやグランドホテルで公演しているといったイメージでした。薄い。
そんな、ある日。「好きな大衆演劇の劇団が関東に来ているので、観に行きませんか?」と、お誘いをいただきました。それが、2018年6月のこと。
声をかけてくださったのは、ある漫画家さん。拙著『2・5次元舞台へようこそ』の感想をくださるなど、ご自身も舞台を愛しコラムなどを執筆されている方で「お芝居好きなら、一度は観てほしいと思って」とのこと。
もちろん「行きます!」と即答――それがすべての始まりでした。