舞台上ばかりではなく、お客様にもびっくり
舞踊ショー、お芝居、ラストショーで3時間余りって! いったい何回、お着替えになるの?
しかも着替えが速すぎる。美しいかと思えばコミカル! かと思えば妖艶! 目が忙しい……けど愉しい……なんだこれ???
所作がとてつもなく美しく。芝居で滔々(とうとう)と台詞を語りながら、さらさらと着物を着替える場面では手元をちらりとも見ずに、あれよあれよと結び直される帯、裾をはしょる指先、裾さばき、すべてが鮮やか。剣殺陣がド迫力、体幹がすごい。繰り返すけど、とにかく距離が近い、近い、近い……
さらに舞踊ショーは撮影自由! お目当ての役者さんが登場するやいなや観客は一斉にスマホやカメラを構え、パシャパシャと(もちろんフラッシュはなし)。思わず私もスマホを構える……と、うっとりするような流し目が、ばっちりとカメラ越しにこちらへにこり。目線が強い! 強すぎる。
舞台上ばかりではありません。お客様にもびっくりです。
年上のお姉さま方から可愛らしいお嬢さん方と年齢層は幅広く。お着物の方、おそろいの役者の名入りTシャツ姿で今日のために集まったとおぼしき方々、普段着でちょっとそこまで、といったご夫婦に大きなカメラを抱えた少女や男性、お子さんを連れたご家族と、老若男女が拍手喝采、それぞれに楽しんでいる。
と、ふいに楚々(そそ)とした佇まいの白髪をきれいに結い上げたお姉さまが、すっ、と横に置いた風呂敷を広げました。そこには着物を包む、たとう紙が。「?」と思った瞬間、両手に捧げるように持ちしずしずと歩み出て、なんと役者が舞う舞台上に置いたのです。
さっ、と舞台袖から出てきた別の役者さん、その包みを手にお辞儀して去りました。なにごと?と、ほどなく、バッ! と広げた両手で絢爛豪華(けんらんごうか)な着物を掲げ、役者が舞う後ろへと登場するではないですか……
あっ、理解! 先程の包みはこの着物で「賜わりました」と、今、この瞬間、客席に向かってお披露目している。
すごい!!!役者さんのサイズや好みをご存知なの? 事前にご相談しているの? 今日って別に特別な日――お誕生日公演とかですか? どうなってるの……と心のなかで大騒ぎ。
やがて、さらにびっくりすることが。着物を受けとった役者さんが、それをまとい登場し、晴れやかに舞うではないですか……直接、贈り物を渡せて、お披露目し、あまつさえ御本人が着て目の前で踊ってくれる……これ、ものすごく幸せじゃないですか!?