「男性稼ぎ主型モデル」に固執した日本

ケアの家族化がいつまでも維持された諸国では、ケアは家族の責任です。その「家庭責任」を果たすのはもっぱら女性、ということになります。これを男性稼ぎ主型モデル(male breadwinner model)といいます。

このモデルに固執したのが日本です。日本だけではありません。ヨーロッパではイタリア、ギリシャ、スペインのような南欧諸国、アジアだと韓国がそうですね。

ケアを誰が担うのかという問いは、再生産コストの分配問題を解くことだといいましたが、そうなれば再生産コストの分配の効果とは、子どもがどれだけ生まれるかで測ることができます。

各国の合計出生率(ひとりの女性が生涯に何人の子どもを産むか)を国際比較してみるとおもしろいことがわかります(図2参照)。

図2:労働とケアの配分とその帰結(『最後の講義完全版 上野千鶴子 これからの時代を生きるあなたへ 安心して弱者になれる社会を作りたい』より)

共働き+ケアの公共化モデルが出生率が一番高く、共働き+ケアの市場化モデルがその次にきます。最後の男性稼ぎ主モデルの社会では、もっとも子どもが生まれにくいことがわかります。