東京大学名誉教授・上野千鶴子さんがNHK『最後の講義』で伝えたこととは(写真:NHK)
日本における女性学、ジェンダー研究のパイオニア的存在である東京大学名誉教授・上野千鶴子さん。2021年3月、「人生最後の日に何を語るか」というテーマで著名人が特別講義をするNHKの『最後の講義』へ出演。視聴者へメッセージを伝えました。上野さんによれば、日本女性の地位が低い理由のひとつとして「家族のケアを女性に押し付けてきたことがある」そうで――。

日本の女の地位はなぜ低いのか

ここで国際比較をやってみましょう。日本の女の地位がなんでこんなに上がらないのかは、諸外国と比べてみると、その違いがよくわかります。

東西冷戦が終わって、1990年代の初めにグローバリゼーションが始まりました。グローバリゼーションの定義は、「情報・カネ・モノ・ヒトの国際移動の増加と、それに伴う国内外秩序の再編成過程」を指します。

グローバリゼーションには、好きも嫌いもよいも悪いもありません。それは、たんに抗(あらが)えない事実です。

情報・カネ・モノ・ヒトのなかで、流通のスピードが一番速いのは情報です。その次に速く動くのはカネです。その次に動くのがモノで、一番動きにくいのがヒトです。

今はコロナ禍のおかげでヒトの動きが抑えられていますが、ウイルスの動きを止めることはできませんでした。コロナの感染拡大とグローバリゼーションのあいだには密接な関係があります。