私の不妊治療は回り道が多かった

ある知人女性は、やはり子どもがなかなかできなかったのですが、「人工授精や体外受精に夫を付き合わせるわけにはいかない」という強い意思をもっていました。「でも、御主人の協力が必要なのよ」という私に対し、彼女は日本中の誰もが知る御主人の名前を挙げて、「私の夫はAですよ。そんなこと、Aにはさせられません」と頑なに譲りませんでした。

それでも彼女は自身の婦人科系疾患だけは治したいと希望。私は腹腔鏡手術の名医を紹介しました。

約半年後、彼女がその手術のせいで、大変な思いをしたことを報道で知りました。彼女との付き合いは今も続いていますが、そのことを彼女が何も言わないので真偽のほどは今もわかりません。

今振り返れば、どんな治療であっても、簡単に医師や薬を紹介してはいけないのだということをこのとき思い知りました。

漢方については、不妊治療では必ずと言っていいほど処方があります。ですが、私は薬剤性肝炎になった経験を新しい医師に診てもらうたびに伝えました。それでも、「みんな、飲んでいる薬だよ」「少量、試してみれば?」と有名薬剤メーカーのタブレット型漢方薬を薦めてくる医師もいました。

《漢方NG》の私の身体がまた妊娠を遠ざけているのかと思うと絶望的な気持ちになったのも確かです。

それにしても、私の不妊治療は回り道が多かった。藁にもすがる思いで訪ねた病院の「不育症」専門の若い医師から「不妊の患者っていうのは、どうしてこんなに転院が好きなんだろうねぇ」と呆れたようにつぶやかれたこともありました。

(写真提供◎写真AC)

医療に不信感を募らせる私を支えてくれたのは、15名からなる《不妊友達》でした。(つづく)


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