垣間見た不滅のハリガネムシ魂

ハリガネムシ系の女性といえば、先日忙しい合間を縫って見てきた『ハウス・オブ・グッチ』の主人公パトリツィアもバッチリ当てはまる。

元ネタとなっているファッションブランド、グッチの御曹司殺害のスキャンダルは、ちょうど私がフィレンツェで子どもを産んだ翌年の1995年に起こった出来事で、テレビの報道番組がこの話題で持ちきりになっていたのを思い出す。

目論見通り、グッチの生真面目な御曹司を色気と情熱で虜にし、妻となったパトリツィアだったが、そのうち頼まれもしないのに積極的に会社の経営を夫の頭越しに操作するようになり、ただでさえ土台が揺らいでいたグッチをさらに混乱と破綻の道へと陥れていく。

レディー・ガガ演じるパトリツィアの情動的かつ強固な生命力で溢れかえっている女の姿は、見ていると疲れるが、痛快でもあった。なぜならパトリツィアは男性に縋ることで自らの名誉と富を築こうとするその横柄な姿勢を、隠そうとはしていないからだ。

見た目はあくまで清楚でしおらしく、または自立心旺盛にサバサバと振る舞っていながらも、心中では強い野望を抱いて男性に取り入ろうとする狡い女たちも少なくないことを思うと、パトリツィアの態度は呆れ返るほど潔い。

ちなみに18年の刑期を終えて、現在は普通に暮らしているパトリツィアだが、昨年のテレビのインタビューでは、グッチ家スキャンダルの映画化に納得いかない様子だった。自分を演じたレディー・ガガが挨拶に来なかったことが不満らしい。「わたしへの敬意が足りない」のだそうだ。

さすが、映画のイメージを裏切らない発言だ。「また機会があれば燃えるような恋愛をしたい」と熱く語るパトリツィアに、不滅のハリガネムシ魂を垣間見た気がした。