ダメなやつのほうがもっと馴染める
2021年の年末に私が観た、『妄ソー劇場・すぺしゃるvol.3』は全七景。ロリータファッションの少女が都会の迷路の中で母親と待ち合わせ。意味不明の答弁をする国会議員。高速道路を走る自転車男の言い分。たくましくも愛すべき中華屋のおばさん。プロデューサー。立体紙芝居。そして最後の音楽ネタは、場末のキャバレーの初老のホステス、ひとみちゃん。綺麗で歌がうまくてうら寂しくて、とても好き。
――ロリータふうの衣装着てる子が、僕の住んでる東京の西葛西に居たんですよ。文房具屋の前で何か物色してて、普通に駅のほうに歩いて行く。それだけなんだけど、映像として残るんですよ。そこにその母親という一番太い絆を持ってくるとどうなるか、っていうのが頭の中で動いて、作品にしていくんですけども。最終的にはあの女の子が自由になって、僕自身があの子を愛おしく思えるかどうかなんですけどもね。ネタになるかならないかはそこですね。
僕は女性のほうがすごく自由だと思ってます。だから中華屋のおばちゃんも、キャバレーのホステスも、根は自由なんですね。その自由の発露がどう出るか、という話であって。でも男って、規則が向こうからやってきたら守らなきゃいけない。一方、女性にとって規則は自分の中にあって、向こうからやってきた規則ははねのけちゃう。
一人芝居って、特殊な人が出てくるとお客さんは引くんですよ。それより、あ、こういう人知ってる、と思えるほうが、皆が参加できる。自分よりダメなやつのほうがもっと馴染める。
そういう人たちが自由になれる、あるいはヘマをする。そこにとってもね、喜びを見出して、愛おしくなるんですよ。